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貧乏旅行 京都 そのに

ワールドコーヒーにてコーヒーをちびちびやりながら、時間を潰せそうな場所を地図で探していると大文字山が近くにあった。登ろうと決めて店を出て少し歩くとすぐに山が見え禿げた山肌にうっすらと大の字が見えた。

この日は白色でマキシ丈のtシャツワンピースにワイドパンツ、スニーカーと登られる山に言わせても「飛びっきり俺(山)を舐めている」服装をしていた。そんな格好で銀閣寺を横目に、明らかに登るぞ!ってな身なりの人たちのあとをついて入山した。

 

 

しばらくすると前には一人の老人が登っていて、後ろにいる俺には聞き取れない程度の声量でぶつぶつと何か言いながら歩いていた。面白そうだしついていけばきっと上に着くだろうと後ろを追って歩いていたら途中で明らかに正規の道ではなさそうな険しい道の方へ進んで行き始め、後ろを振り返ると後を尾けていた自分以外は別の方の道へ進んでいくのをが見えたので、独り言老人に背を向け元来た道へ少し戻りちゃんとひと気のある道の方へ向かった。

登り直した道の勾配はそこまできつくなかったので、足元で揺れる裾をたくしあげれば山に不向きな格好でも登り続けることができた。まあつまづいたり転んだ時にすぐ手を前に出せないので危ないんだけど。

 

 

てくてくと進んでいると山での仕来りなのかすれ違う人に挨拶をされるのでもちろん返す。向こうからされなければ自分から声かける。登り始めたときすでに9時を過ぎていて、既に午前中の3時間も京都で過ごしている俺の体感では朝は終わっていたので挨拶に「おはようございます」じゃなくて「こんにちは」を使っていたら、「おはようございます」と何度か返されることがあり、俺が日中を過ごしていている一方でこの人たちの中では朝がまだ続いている事がなんだか面白かった。

 

 

日曜だし、他の登山客もそこそこいて挨拶ついでに少し話すと「はじめて登ったの?じゃあ上に着いたら、めっちゃ感動するよ!」と山の回し者かとばかりに上からの眺めを期待させるお姉さん二人組や、登りながら息をホッホさせ「翼をください」を歌うおじいさんに出会った。全部面白い。たどり着いた送り火の火床から見える景色は「感動する」との前評判通り絶景で下に広がる古都の街並みに加えて、街のどこからか山の上まで鳴り響いている族車の切るコールの音が知らない京都の姿を教えてくれた。もちろん動画に撮った。それを耳にぼけーっと座って景色をみてたらあっと言う間に10時になっていたので山を降りた。暇つぶしは達成されたのだ。あと銀閣寺の横でまたさっきのお姉さん達に会ったので登って良かったと伝えたら「でしょー」とのこと。

 

山を降りたら降りたで今度は哲学の道を歩き腰掛け風の石に座ってちょろちょろ流れる川なんぞ眺めて、やっと11時になったので展示会へ向かった。今回の旅の目的はそれなのだから。

ホホホ座浄土寺店は普段街の本屋で見かけない本ばかり置いてあって、どれも自分の色を出しまくった背表紙と表紙が並んでいた。目当ての「苦顔絵」のベースとなる写真を作者本人に撮ってもらった後は、できあがるまでの間に大嶋作品のネームや原画をパラパラと眺めたり、過去の同人誌を立ち読みして過ごした。完成した自分そっくりの苦顔絵を受け取って、緊張ゆえの上滑りした会話をしたのち、先行販売されていたLONG VACATIONや同人誌を買って店を後にした。たまにいく同人誌の即売会とかでもそうなんだけど、作者本人と会って喋って本買って帰る時って時計見るとぜんぜん時間経って無いんだよね不思議。

 

ホホホ座を出た後は、近くのトロトロという名前の洋食屋に出てた看板の名前のインパクトだけを理由に入り、オムライスを食べて帰りの電車を乗る為に蹴上まで歩き、そこから鈍行ゆえの人生初1日で8回もの乗り換えをして無事家まで帰宅した。8時間半も電車移動に使ったので一人では退屈かと思いきや、意外と外を流れる景色をホヘーッと眺めたり、買った漫画を読んでいたら見知った駅の方までたどり着いていたのでどうと言うことはなかった。2本目の乗り換えの際に、乗ってた電車が一つ手前の駅で何かのトラブルで一度止まってかなりヒヤヒヤした時を除いて。

 

かなりの強行突破な旅行で観光といわれる行為をほとんどしてないけど、遠出した先でする買い物と散歩はまた一味違った楽しみがあるなと気づくことができた。一人だと急に山登りもできるもんね!

次に遠出するときのは青春18切符とか使って今回よりもさらにケチって足腰を痛めつけるのもアリかもしれないと思った。できる体があるうちに。

 

描いてもらった苦顔絵はtwitterのアイコンにしておくのでよければ、見に来てね